中村好文さんの事務所 レミングハウスに伺った時に この椅子がちょこんと置いてありました。
大磯のご自宅のデッキにも、このうさぎの椅子が置かれていて、海をぼんやり眺めています。
時には 好文さんの口笛や鼻歌を、耳をそばだてて聞いているみたいな、そんなかわいい椅子です。
工房より直接発送のため、本体価格は送料、梱包料込みの価格です。ヤマト運輸でお送りします。
(白 商品代36,000円、黒 商品代42,000円と送料全国一律4,300円の価格です。)
「LAPINの誕生」
26年ほど前の日曜日のこと。
自転車操業の設計事務所の所長に休日はありませんから、いつもなら朝食を済ませ、手早く身支度して慌ただしく事務所に出かけるところですが、その日は珍しくそれほど切羽詰まった仕事はなく「久しぶりに休むことにしようかなぁ‥‥休んじゃおう!」という気持ちになりました。
そこまでは良かったのですが、では、その休日をどのように有意義に過ごしたらよいか、さしあたって思いつくことがありません。テニスをするとか、釣りに行くとか、鉄道模型を組み立てるとか、自転車でツーリングに出かけるとか、映画を観に行くとか、ガーデニングに精を出すとか‥‥人並みに趣味らしい趣味があれば、休日らしい休日が過ごせるのですが、仕事人間(ワーカホリック)の悲しさで手持ちの趣味がないのです。しばし呆然と天井を睨んでいるうちに、ふと「そうだ、子供椅子をひとつデザインしてみよう」というアイデアが閃きました。なんのことはない「休日」のつもりが、家具デザインの「仕事」に舞い戻ってしまったのです。
結局「仕事が趣味だったんだ」とあらためて気づいたわけですが、それはそれとして、さっそくアイデアスケッチを描きはじめました。そしてスケッチを繰り返すうちに、スケッチの中からウサギをモチーフにした子供椅子が浮かび上がってきました。次にフリーハンドで原寸図面(実際のサイズの図面)を描き、さらに手近にあったダンボール箱を壊し、そのダンボールを使って原寸で模型を作り、それを切ったり貼ったり少しずつ手直ししてダンボール製の試作第1号が完成しました。
そして、描き立てホヤホヤの手描き図面と出来たてのホヤホヤの模型を長野の家具職人に宅急便で発送して休日の「趣味の時間」はつつがなく終了しました。
それから先は家具職人との阿吽の呼吸の協働作業でした。このときは本番の試作のほうも快調に進み、苦労らしい苦労をしないでウサギを連想させる愛らしい子供椅子が誕生しました。
ぼくはこの椅子を「LAPIN」と名付けましたが(LAPIN/ラパンはフランス語でウサギのことです)、このLAPIN は子供たちに絶大な人気があり、これまでに1000脚近く製作され、1000人近くの子供たちに愛されてきました。
最後に。
このLAPINを四半世紀以上にわたって作り続けてくれているのは奥田忠彦さんという素晴らしく腕のいい木工家ですが、じつは、その奥田さんがこの子供椅子を丹精込めて作り上げる貴重なドキュメンタリー映像があります。
今回、CHECK&STRIPEでLAPINをお買い上げの方から抽選で7名の方にこのDVDを贈ります。ぼくからのささやかなクリスマスプレゼントです。冬の夜長、かたわらのLAPINを愛でながら、じっくりご鑑賞ください。
中村好文(建築家)